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Koichiro Yamamoto

Japanese | English

useless

Highslide JS
small jug/1997
Highslide JS
jug&mug 3/2000
Highslide JS
still life/2002
Highslide JS
tea pot with spout/2003

使えないモノ

博物館などに置かれている歴史的に意味のある器たちは、水を溜めるとか食べ物を入れるなど、もともとの役割を果たすことなく、ただ見られることだけに使用されている

いとも簡単に変えられる機能
本来「機能」という概念自体が曖昧なのである
もしそうならば、いかなるモノも、ひとびとがそれと認識できる名前さえあればよいのかもしれない
持つべきとされる機能など、なくてもよいということだ

私の作品は、だれにでも容易に認識できる日常のモノばかりである
代表作の「スモールジャグ」を見れば、ジャグの形とハンドルにより誰でもジャグとわかる

ジャグにはハンドルが付いているものという既成概念と、無意識に起こる認知作用を利用しながら
ひとびとの心にあるイメージが表現されている

この認知のあとに鑑賞者は、何かおかしいぞと気になり始め、ハンドルが反転され、それも空洞でしかないことに驚かされる
これらの彫刻作品は、リアルとバーチャルの両方のイメージを持ち合わせているのかもしれない

世界中で最もリアルなものとは?

例えば、イメージ
みんなが心の中に持っているイメージ
そして、空間
普通は意識しない空間
子どもの頃によく食べていた食べ物、過ごしていた部屋という空間、またはコップひとつが作っている小さな空間など

ひとびとが何かに対して抱いているイメージや、モノが作り出す空間の方が、実際に存在する食べ物自体や部屋自体よりもリアリティがあるように、私には思える

「スモールジャグ」において最もリアルなのは、存在しないハンドルであろう
ハンドルは、ただそこにあるように見えるだけ
実際に存在しているジャグ自体は何か変な存在であり、言いかえれば影のような存在だ

ひとはモノを見るとき、いつもそこに存在しているものを見る
しかし、この作品においては、「存在」よりもむしろ「不在」を意識する